これからの「正義」の話をしよう

いろいろと生きづらいマイナー街道まっしぐらな人生を送っておりますが*1
ベストセラーにはとりあえず手出ししてみる、という方針です。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

哲学は机上の空論では断じてない。
金融危機、経済格差、テロ、戦後補償といった現代世界を覆う
無数の困難の奥には、つねにこうした哲学・倫理の問題が潜んでいる。
この問題に向き合うことなしにはよい社会を作りそこで生きることはできない。
アリストテレス、ロック、カント、ベンサム、ミル、ロールズノージック
といった古今の哲学者たちは、これらにどう取り組んだのだろう。
彼らの考えを吟味することで、見えてくるものがきっとあるはずだ。
ハーバード大学史上空前の履修者数を記録しつづける、超人気講義、
「Justice(正義)」をもとにした全米ベストセラー、待望の邦訳。

哲学本といえばツチヤ教授の本*2しか読んだ経験がなく、
一見して思ったことは「これ、読み切れるかしら」でした。
で、案の定読み終えるのに時間がかかりました。
一人を殺せば五人が助かるという状況にもし陥ったとしたら、
その一人を殺しますか?
前の世代の犯した過ちについて、次世代の人間に償いの義務はありますか?
など、具体的な事例を出して議論されているので思っていたよりは
読みやすかったですが、たぶん理解はできてません。
正義という言葉はひとつだけれど、言葉に込められる意味は多種多様。
本当は「正しい」の対義語は「悪い」なのではなく、一方がもう一方を
部分的に内包していることもあったりするのが現実だし、
アメリカの言うところの「正義」が日本の「正義」とイコールだとは
考えづらいところもあったり。
そもそも「正しい」という定義ってなんじゃろなーとか考え出したらキリがなく、
顔中の穴という穴からもくもく〜と煙が出そうになりました。出ないけど。
いろんな視点をもって「正義」について改めて考え直してみる、という点で
読んでよかったなあと思います。苦労したけどな!

ご存じのとおり、日本国内で60万部以上を売り上げたベストセラーでして、
ということは少なくとも60万人以上がこれを読んでいるわけで*3
読んだきっかけが「流行に弱い日本人の性質によるもの」だったとしても、
正義について考えた日本人が少なくともそれだけの数いるのならば
もう少しどうにかいい方向に向かんもんかねーと、
自分のことは棚に上げて思う次第。

*1:愛してやまない某気象系あいどるさんだって、今でこそ国民的あいどるだとか言われてますがもともとは地下系シュールあいどるでありました。当時はなんでこんなにおもしろいのに人気が出ない、と思ってたけど今ではなんであんなシュールなのが売れた、と思っています。

*2:元哲学科教授、土屋賢二氏。妻と助手におびえ振り回され耐え忍ぶ日々を面白おかしく綴ったエッセイが面白いです。

*3:途中で挫折した、という仮定を捨てるとすれば