リアル・シンデレラ

シンデレラ [DVD]

シンデレラ [DVD]

『シンデレラ』のようなお話が、嫌いな子供でした。
ビンボーで継母にいじめられて耐えて頑張ってたら
お金持ちでハンサムな王子様に見初められてハッピーエンドという簡単さが
いまいち好きになれず。
でも、せっかく買ってもらった本とかビデオ(当時)に文句言っちゃいけないと
「たのしいね」というフリしてたんだぜ。
いい子でいられない自分には価値がないのだといい子を演じていたんだぜ。
いやあ我ながら可愛くない子供だわー!
リアル・シンデレラ

リアル・シンデレラ

電車の中で読みづらい表紙ですが、特にエロい話じゃないです。
少年よ、残念だったな!(電車で読んでた時こっちを凝視してた少年がいた)
童話「シンデレラ」について調べていたライターが紹介された女性、倉島泉。
長野県諏訪温泉郷の小さな旅館の子として生まれた彼女は
母親に冷遇され妹の陰で育った。町には信州屈指の名家片桐家の別荘があり、
ふとした縁で松本城下の本宅に下宿することになる。
そこで当主の一人息子との縁談がもちあがり…。
多くの証言から浮かび上がってきた彼女の人生とは?
不況日本に暮らす現代人にこそ知ってほしい新たなるドキュメントフィクション。

冒頭、シンデレラが嫌いだというライターが、嫌いな理由を話します。
それがもう!ね!(誰に言ってるんだか)
長年言葉に落とし込んで表現できなかったシンデレラに対する違和感の塊を
すうっと溶かしてくれました。ああすっきり。それだよ。嫌いな理由。
靴の中にずっと入りっぱなしだった小石がやっととれた、そんな気分だよ!
直木賞の候補にも挙がった『リアル・シンデレラ』、
美しさと富を手に入れたシンデレラは本当に幸せなのかと
現代の価値観に疑問を投げかける力作です。
リアル・シンデレラである泉が願った「3つの願い」はどれも、
物質的な豊かさ=幸せだと信じ行動することに疲れた、
けれどその価値観から抜け出せない現代人にとっては桃源郷のように思えます。
ストーリーは本家シンデレラとは当然違った展開ですが確かに「リアル」です。
泉のことを「幸せだった」「不幸だった」とは最後まで表現せず
読み手に判断を任せるようなラストも、私はよかったけどな〜。*1
直木賞の選評にて宮部みゆきさんが言っていたとおり
「書いてくれてありがとう」と、本を閉じた後、私も思いました。

*1:でも、たぶん一般受けはしない。今の売れ筋は親切丁寧設計ですっきりわかりやすい話だもの。