僕は、そして僕たちはどう生きるか

読書脳がキレッキレになって(@またよし氏)ゾーンに入った時、
文字が絶叫してるように見えたり*1
本自体が発熱してるように感じたり*2
そんな経験をしたことが何度もあります。

この本を読んでいるときには
本そのものが切々と語りかけてくるような感じがしました。

僕は、そして僕たちはどう生きるか

僕は、そして僕たちはどう生きるか


やあ。よかったら、ここにおいでよ。気に入ったら、ここが君の席だよ。
コペル君14歳、考える。
春の朝、近所の公園で、叔父のノボちゃんにばったり会った。
そこから思いもよらぬ一日がはじまり…。
少年の日の感情と思考を描く青春小説。

似たような題名だなーと思ったら案の定、
むかーし、子供のころに読んだこの本に出てくるコペル君のお話でした。

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

コペル君はコペル君でも21世紀のコペル君は、
あの「コペル君」とは違います。
けれどやはり、考えることを止めてはいませんでした。


「泣いてはだめだ、考えられなくなる。」と言い切れる強さ。
考え続けることができる強さ。
物語の中のありとあらゆる言葉と
コペル君ユージン君の姿にひっかっかって、ゆっくりゆっくり読みました。
難解すぎてゆっくりになるのではなく、
考えることを止めさせないからの、ゆっくり。
立ち止まりながら打ちのめされながらゆっくり読み進める様が
ふたりの少年の不器用だけど逞しい歩みそのもののようで
なんだかすこし嬉しかったなあ。
「ふつう」という言葉の胡散臭さと大多数の側にいるという安心感、
普通と普通でないものの境界線について、
群れることについて、自分の核心について、
読み終えた後も考えることが止められません。

男の家に女が転がり込んで草を食べる、
そしてその草ごはん(?)がものすごくおいしそう、
という意味では『植物図鑑』*3にもちょっと似ています。
全然甘くないけど。苦くて重くて深いけど。

早くも勝手に本屋大賞*4の大賞候補作品に出会ってしまったなあ。

*1:桜庭一樹ファミリーポートレイト』とか

*2:小川洋子『人質たちの朗読会』とか

*3:有川浩

*4:年末に勝手に開催してる、私の私による私のための私しか楽しくない企画