幸福な生活
読書芸人@あ/めとーーくでピースのまたよしさんが
「好きな作家の新刊が出てることにも気づかずのうのうと生きていた」
と本屋さんにて零しておられましたけども、
まさにそれです。
- 作者: 百田尚樹
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2011/05/27
- メディア: 単行本
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認知症が進んでから母はよく喋るようになった。
しかしその話の大半は出鱈目だ。妻は自分がいつ殺されたのと笑うだろう。
施設を見舞うたびに進行していく症状。
子どもの頃に父が家出して以来、女手ひとつで自分と弟を育ててくれた母を
ぼくは不憫に思えてならない。
久しぶりに訪れた実家の庭でぼくは
むかし大のお気に入りだった人形を見つける。
40年ぶりに手にした懐かしい人形。だが、それはおそろしい過去をよみがえらせた……(「母の記憶」より)。
サスペンス、ファンタジー、ホラー……、様々な18話の物語、
そのすべての最後の1行が衝撃的な台詞になっているという凝った構成。
ページ数274ページ、収録短編集の数18話。
ひとつひとつは短い物語です。
これだけの数の物語が、すべて面白い!
世にも奇妙な物語のような
ホラーじゃないけど思わず背後を振り返りたくなるような、
腹の底がひやっとするような、そんな感じです。
テイストが似たものが多いので一気に読んだらちょっと飽きちゃうかもなーと
敢えて何日かに分けて、ちびちび読みました。
女性の美醜について割とステレオタイプな書き方をされるような気がするなあ
という点がひっかかるといえばひっかかりますが。
そして、こんな寒い冬に読むんじゃなくて
まとわりつくような暑さの中で読みたかったかなー。
全話、最後の1行がページをめくった先の
見開き右側の1行目に来るように書かれています。
この設定の妙はまさにプロのお仕事。
鏡から髪の長い女が這い出てくるとかいうホラーも
もちろん怖いけれど、
現実で一番怖いのはたぶん人の心。
夜の闇を恐れることのなくなった現代人にとってこの本は
よりリアルな怪談集かもしれません。